スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

2012年度 SS課題研究論文要旨集(立命館慶祥高等学校3年)

1.スターリングエンジンの出力評価(日本学生科学賞 北海道読売新聞社賞)

閉サイクル外部燃焼方式エンジンであるスターリングエンジンは作動流体を加熱・冷却によって膨張・収縮させることで動く。低温度差作動型スターリングエンジンは温度差が大きくないために出力が小さいので、その出力評価にあたって外部に負荷をかけての測定は難しい。そこで、動かしている時(作動時)と動かしていない時(停止時)の高温部、低温部の温度の低下を測定し、そこからこの低温度差作動型スターリングエンジンの出力の評価方法を検討した。

2.カビのストレス応答

カビとは酵母、キノコを含めて真菌と呼ばれる微生物の一群であり、糸状の菌糸先端から栄養や水分を吸収しながら菌糸を伸ばして成長していく。カビの種類はいままで約5万種が知られ、その中には有益なカビや有害なカビがある。そこで今回、身近に存在しているカビをサンプリングし様々なストレスを与え、それがカビの成長にどのような影響を与えるのかを研究したところ、酸素の量や培地のpH,薬剤に対する抵抗性の有無がカビの成長に大きく関わることがわかった。

3.過冷却

過冷却は小学生の自由研究の定番であるから、過冷却による氷の結晶を見た小学生はその魅力にひかれる確率が高いといえる。試験管など小さな器具は簡単に過冷却ができ、またペットボトルなどの大きな器具は機械を使うと簡単に過冷却できる。しかしながら、試験管では小学生にとって迫力に欠け、また試験管が家にある家庭はほとんどない。それに加えて、冷凍庫などの機械を使ってペットボトルでも過冷却ができるが、機械を使う実験は自由研究にふさわしくない。小学生の興味を引くためには、小学生でも簡単にできる程度の大きさの容器、かつ、どの家庭にでもありそうな容器で成功することが求められるだろう。そこで、確実に過冷却を成功するための方法を得たいと考えた。過冷却を成功させるため、冷却する際の温度・時間・手順をさまざまな方法で研究した。その結果、ほぼ確実に成功するデータが得られた。

4.アレロパシーが発芽に及ぼす影響

アレロパシーは他感作用とも呼ばれ、「植物が放出する化学物質が他の生物に阻害的、あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象」を意味する。また、作用する物質を他感物質と呼ぶ。こうした自然界に存在する植物間の他感作用を雑草防御に適応することは、環境への負荷が少ない雑草防御手段として有用であると考えられている。しかし、植物の他感物質を利用し、昆虫や微生物の研究はあまりなされていない。そこで、この研究を通して身近に存在する植物のアレロパシー活性を調べるために、植物間の他感作用を調べる場合に適したサンドヴィッチ法を用いた。

5.ミナミヌマエビの体色変化

魚などの水生生物は,種類によってさまざまな体色をしていて,また,その種に特有の色をもっている。この体色の発現には色素胞という細胞が大きく関わっている。生物は,色素胞の組み合わせや量,さらにそれらの排列状態や重なり方,形状,大きさなどの状態によっていろいろな色彩をもつようになる(エビ・カニはなぜ赤い)。しかし,体色変化を起こす条件について詳しく述べられた研究結果がなかったため,体積と背色の条件での体色変化の関係性について調査した。

6.音と感性の関係

黒板を爪でひっかく音などは、多くの人が共通に不快感を覚える音である。その不快音が人の感性に与える影響は大きく、快適な生活環境を維持するためには、不快音除去が重要となる。しかし、どのような音が人間に不快感を与えるのかは、まだはっきりと解明されていない。そこで、不快音の特徴や人間に与える影響について明らかにするために、アナログ・デジタルで録音した不快音を解析し、その違いを調査した。

7.人工雪発生装置を用いた雪の結晶の発生条件の解明

雪の結晶は様々な形と、美しい見た目から多くの人に慣れ親しなまれている。しかし、まだ雪の結晶と温度の関係は詳しくわかっていない。そこで、まだ正確には測定されていない、結晶ができるときの温度の測定すべく、雪の結晶の発生には平松式ペットボトル人工雪発生装置、温度の測定には10分の1℃まで測定できるデジタル温度計を適用した。その結果、結晶ができる場所はペットボトルの温度が上がり始める付近であることがわかった。これにより、上空でも気温が上がり始める付近で発生すると考えられる。

8.天然酵母菌

皆さんは酵母菌を知っているだろうか、酵母菌は様々な発酵食品などに利用されている。パンや納豆、味噌などにも利用されている。酵母菌は様々な場所や物に浮遊、付着していることが分かった。そこで私はどの食材に付着している酵母菌が最もパンづくりに適しているのかを研究したいと思ったのがこの研究を始めた理由である。

9.反発係数とボールの空気圧の関係性

現在サッカーボールの空気圧は0.6-1.1気圧までと規定されている.しかし,この規定の理由は明瞭な物でなくまた規定の幅も大きくなっている.そのためにこの空気圧の規定は選手が安全かつ公正に試合を行えるかは疑問となっている.そのため空気圧とボールの反発係数をしらべる事とした.その結果その空気圧の中で反発係数は最大値と最小値で約10ほどの違いが現れた.

10.モデルロケット

モデルロケットの打ち上げをした際に、失敗することが多くある。例えばパラシュートが放出されずミサイルのようになることや、逆噴射の熱でパラシュートが溶けてしまい、パラシュートが開かないような状態になってしまう。それは、逆噴射の熱が高温のまま直接パラシュートに当たってしまうことが原因であると考えた。そこで、まずは逆噴射の威力がどれくらいかを調べ、さらにパラシュートの溶け具合、逆噴射の熱の発散方法などをさまざま試してみた。そして最も逆噴射の熱によってパラシュートが溶けなく、しっかりと分離できる方法が何かを導き出す。

11.太陽光発電のより効率のよい発電方法

今日では灯油やガスなどを使う住宅が減ってオール電化といわれるすべてが電気でまかなうことのできる住宅が増えてきている。これはとても便利であるといえる。資源が無くなってきているということもあるので、これは大いに社会に貢献していると思う。しかし現在日本は東北大震災によって重大な被害を受け、福島第一原発が機能しなくなるなどという問題が生まれ、東京電力は電気が足りなくなっている。そこで、電力をなくさないように電力を多く作るべく、太陽光発電をより効率よくつかうことを適用した。その結果、電力を通常の発電状況より多く発電ができるようになる。これにより、現在の日本、東京電力などが悩んでいる問題にひとつ解決策が生まれるといえる。

12.根粒菌とアーバスキュラー菌根菌の相互関係

土壌中の糸状菌が、植物の根の表面または内部に着生したものを菌根と言う。菌根菌とは菌根を作って植物と共生する菌類のことである。共生の形態から植物の根を包み込み鞘状の菌糸を形成する外生菌根菌と、根の内部で伸長する内生菌根菌に大別される。菌根菌は、土壌中に張り巡らした菌糸から、主にリン酸や窒素を吸収して宿主植物に供給し、代わりにエネルギー源として宿主となる植物が光合成により生産した炭素化合物を得ることで共生関係を築く。多くの菌根菌は共生植物に対し明確な成長促進効果があり、実際に、菌根菌を取り除いた土壌で栽培した植物は生育が悪くなる傾向にある。アーバスキュラー菌根菌(以下AM)は内生菌根菌に分類され大多数の陸上植物の根にみられるものである。根の外部形態には大きな変化は起こらず、根の細胞内に侵入した菌糸が樹枝状体と、ものによっては嚢状体とを形成する。根の外部には根外菌糸がまとわりつき、周囲に胞子を形成することも多い。アーバスキュラー菌根の機能としては、リン等の吸収促進、耐病性の向上、水分吸収の促進の3つが挙げられる。このため、アーバスキュラー菌根が形成されると作物は乾燥に強くなり、肥料分の乏しい地でも効率よく養分を吸収してよく育つようになる。共生関係を築く菌としてはマメ科植物に窒素産物を供給する根粒菌があげられる。

根粒菌とはマメ科植物の根に根粒を形成し、その中で大気中の窒素をニトロゲナーゼという窒素固定酵素によって還元してアンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給するいわゆる共生的窒素固定を行う土壌微生物である。根粒内に宿主から光合成産物が供給されることにより、宿主との共生関係が成立している。

植物には複数の根粒が共生している。根粒菌や菌根菌各々の共生関係や生理活性などの研究は比較的蓄積されているが、生態的地位や相互作用などの共生菌種間の関係性について未だ不明である。そこで菌根菌は他の菌根菌と競争の関係にあるのか、中立の関係にあるのか。今回根粒菌とアーバスキュラー菌根菌が同所的に存在するのか、散在的なのかを調べた。

13.垂直軸型風車

当初、私は垂直軸型風車を自作し、発電効率や回転数などを調べ、その後ブレードを変えて実験を行い比較していく予定だった。しかし、自作したものは、回すことができなかった。そこで、回らない原因を調べるべく、さらに簡易なもので垂直軸型風車のブレードに着目して、研究を行うことにした。そして、扇風機の送り出している風を考えなければ、風車のブレードの研究ができないとわかり、扇風機の性能測定をすることにした。その結果、自作した風車の回らない原因や、簡易なもので行った実験の結果の理由が考察できた。

14.酸性雨による植物への影響

1960年代頃より、欧州や北米では、酸性雨による森林の衰退や生物減少などの生態系に対する深刻な影響が明らかになり、大きな環境問題として認識されてきた。今回の研究では、学校及び自宅付近に降る雨の酸性度を調べ、酸性雨の基準値を大きく超える、高濃度の酸性雨が降っていると判明した。そこで、小カブとレタスの苗に、pH濃度を調整した硝酸水溶液と蒸留水を与えて成育の経過をみたところ、高濃度(pH3以下)のものは6日あたりから大きな変化が見られた。また、pH4以下の水溶液を与えたものに対して、白い斑点のようなものが見られた為、葉への影響を顕微鏡で観察した。これらの結果により酸性雨による植物への影響について報告する。

15.高性能燃料電池の開発

燃料電池は,使い切りの乾電池や充電により電気をためておく2次電池とは違い,水素や水素を含んだメタノールなどを投入する事により,繰り返し利用可能な一種の発電機である。現在,燃料電池は非常に使い勝手の良いエネルギー変換装置として様々な研究が進められており,携帯機器用からオフィスビルや工場用の発電装置としてまで,幅広い分野での導入が見込まれている。

16.バットとボールの反発

野球ではバッティングの際により遠くへ飛ばすことが求められるが、そのためにはいかにバットの芯に当てるかというのが重要である。その“芯”というのは野球をやっていく中では感覚で認識している。そこで、その“芯”というのはバットの何なのか、バットのあたる位置で反発力がどのようにかわるのか、木製バットと金属バットではどれほど反発の様子が違うのかを調べた。バットには様々な種類があり、重心の位置もそれぞれ異なるので、芯と呼ばれているところとそれ以外のところでは、どれほど違いが出るのかを調べた。

17.宇宙塵の採集判別法

学校の初年度に建設された「調整室」の屋上の塵を集めた。17年間で堆積された塵に含まれる大きさ、形、数などを調べ、宇宙塵を見つけるための判別について検討した。

18.自然放射線の測定

札幌地域(札幌市圏内)の自然放射線量について一般に市販されている放射線測定器を用いて測定を行い、市内の自然放射線量の概要を明らかにした。また市内の区役所や北海道大学での精密な機械を用いた公式データと比較することによって、今回の測定で使用した市販レベルの測定器の精度も調べた。

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