スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

2014年度 SS課題研究論文要旨集(立命館慶祥高等学校3年)

1. 宇宙線ミューオンの観測

宇宙線は,宇宙から地球に絶えることなく降り注いでいる原子核,素粒子である。ミューオンは自然界に存在することはなく高エネルギー下でなければ存在することはない。今回,そのミューオンの観測をするために,比較的安価な方法である霧箱を使用し,証明方法や装置を自ら改良し実験をすすめた。その結果,飛跡の様子や各飛跡の特徴の比較からミューオンの飛跡と考えられるものを観測した。しかし,この飛跡をミューオンの飛跡と決定することはできず,今後,その飛跡をミューオンと証明することが必要である。

2. 2種混合粉体の堆積 -土砂災害被害減少を目指して-

土砂災害の被害予想を立てることは非常に重要であるが,その解明はなかなかできていない。そこで私は被害予想を立てる一つの手がかりとして,土砂を2種類の大きさの粉体からなる混合物と見立て,その偏析現象に注目した。グラニュー糖と中双糖の2種混合粉体において,各単一粒子及び混合粉体の安息角の関係性,また,混合粉体の堆積した山における断面の粉体粒子構造の観察をした。その結果,グラニュー糖の安息角は34°,中双糖の安息角は37°,混合粉体の安息角は34°であり,堆積した山ではグラニュー糖は流入口の真下付近に多く堆積し,中双糖に関しては遠くに広がり,山のすそ野部分に多く堆積した。これにより,混合粉体の安定性はより不安定な粉体粒子に合わせられ,断面の粉体粒子構造を見ることで現実の山で山頂付近にあった岩が土石流の際にどれほど広がるかを想定する事ができる。

3.スターリングエンジン -γ型スターリングエンジンとβ型スターリングエンジンの作成と改良とこれからの展望-

私たちは,設計図や既存の先輩方の完成品をもとにγ型スターリングエンジンを作成したが,その作動状況は我々が期待していたものとは程遠く,長く動いたとしても1分程度のものであった。そこで我々はγ型スターリング(以下初号機)を長時間かつ素早い運動できるよう改良し,γ型スターリングエンジンの性能向上の条件を明らかにした。また,β型スターリングエンジンを作成したが作動しなかった。そこで,問題点を取り上げた。

4.不凍タンパク質 -食品への応用-

不凍タンパク質は,血液が固まる温度(凝固点)を降下させる物質として,南極海に生息するノトセニア科の魚類から発見された。現在,一部の不凍タンパク質については開発済みだが,実用化にはあまりいたっておらず,そのメカニズムも多くは解明されていない。そこで,身近な食品であるホッケとカイワレ大根から不凍タンパク質を抽出し,プリンを用いてスのでき方による応用を試みた。その結果,氷の成長を観察することに成功したが,プリンへの応用は成功までいたらなかった。

5.断熱と糖度による溶液の凝固

夏場などよく,ジュースなどの飲料水を凍らせる機会が多い。しかし,糖度のある溶液は飲んだ時に甘さに偏りがでてしまう。そこで,私たちは,液体の凍り方に目をつけ,断熱効果を利用し液体を凍らせた。前段階として,水道水などの糖度のない液体を凍らせて参考にした。その結果,断熱効果から液体の凍り方の違いを見つけることができ,法則を見つけだした。

6.糖度の秘密

スーパーなどの売り場で【糖度○%】という表示を見かけたら,それが甘さの目安である。しかし,同じ糖度の果物でも,味に違いを感じることや甘く感じない。そこで,それにはどのような要因の違いがあるのかを調べるべく,屈折糖度計とフェノール硫酸法を適用した。それぞれで測定した値を比較して,糖度計では糖度以外にどのようなものを測定しているのかを調べた。

7.電池の工夫

日常生活に不可欠な電池は,約2000年前からあるという話もある。電池には物理電池,化学電池,生物電池があり,物理電池には太陽電池がある。太陽電池は太陽光線によって半導体の中の電子が動かされ,電流が生じる。化学電池にはダニエル電池があり,電解液に亜鉛板と銅板を入れると,亜鉛板は電子を放出し,亜鉛イオンとなって電解液に溶ける。今回の実験では,この二つの電池と,空気マグネシウム電池を実験の対象にした。

8.ガザニアとCAM植物における組織培養 -葉小片からの個体再生を目指して-

現在多くの植物が組織培養に成功しているがガザニンおよびCAM植物の組織培養は確立されていない。昨年度の先行研究により,ガザニアにおけるカルス誘導のための植物ホルモンの最適組成を得た。今年度は継続研究としてシュート誘導まで行ったガザニアを順化させた。CAM植物においては,組織培養のための最適な培地組成の情報も少ない。そこで,CAM植物であるベンケイソウを用いて,植物ホルモンの濃度を調節しカルス誘導において最適な培地組成を得た。

9.両生類の幼生期から亜成体における四肢の骨形成の変化 -二重染色法を用いた透明骨格標本の作製-

アリザリンレッド・アルシアンブルー二重染色方法を用いた骨格透明標本を作製し,およそ110個体分の両生類の幼生期から亜成体における四肢の骨形成の変化を探るのが本研究の目的である。
卵から飼育を行い,幼生期からの発達段階に応じて標本を作製することに成功した。また,まだあまり研究の進んでいない両生類独自の骨形成を確認することができた。

10.サーカディアンリズムの本質 -ハムスターのサーカディアンリズム-

ハムスターは夜行性である。日の入りから日の出までの時間帯で活動が活発となり,日光の降り注ぐ時間帯に多く睡眠を行っている。昼間は天敵に狙われるリスクが高いためにこのような活動リズムになったのである。この活動リズムは生物の身の回りにある外的環境因子が関わっている。その中でも特に光が多く影響を及ぼしていると考えられる。光が体に降り注ぐことによって何らかのホルモンが分泌,または抑制されるのだと考えられている。では,もし外的環境因子を取り除いた場合,ハムスターの体内時計はどのような活動リズムを示すのだろうか。そこでハムスターの活動リズムの本質を探るため,実験を行った。

11.河川実験 -破提・蛇行・形状について-

近年,多発する集中豪雨により洪水,氾濫,破堤の被害が増えている。雨量の増加をもとにした氾濫,洪水の予測の研究は進んでいるものの,土壌の水分量についての関係はあまり研究されていない。そこで,河川の土壌の水分量と破堤との関係,蛇行のメカニズム,河川の形状,生態分布について研究し,今後も予想される災害,特に破堤の防止,都市開発に生かす。

12.陸上競技と科学 -走力と跳躍力の関係-

疾走運動と跳躍運動には,極めて短い接地時間で力を発揮して運動を遂行するという類似性がある。しかし,疾走速度と伸張-短縮サイクル運動(SSC)能力との一過性の関係しか検討しておらず,疾走距離の進行に伴って変化する疾走速度に対して,両脚同時および片脚交互のSSC運動能力がどのような関係を示していくのかも明らかにされていない。そこで,SSC運動能力がどのような関係を示していくのかを証明すべくためマルチジャンプテスタを適用した。その結果。これにより,疾走運動と跳躍運動の相関性がみられた。