スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

2015年度 SS課題研究論文要旨集(立命館慶祥高等学校3年)

1. ドローンよりも省エネ・低コストである模型飛行船の製作

近年,産業用ロボットの中でも,空中飛行を可能にしたドローンが注目されている。ドローンは,自然災害時の救助や自然環境のリサーチを可能にするなど私たちの社会を豊かにした。一方で,値段が高かったり,モーターが壊れてしまったり,電力消費が大きいという問題点がある。そこで,私はドローンの代用として,省エネ・低コストで環境評価に必要なデータ測定が可能な模型飛行船を製作した。電力を使わずに,ドローンと同様の働きができれば,低コストかつ大量生産しやすいといった多くのメリットがあったが,電力を使用せずにヘリウムの力だけで物を浮かすためには多くのヘリウムが必要であり,製作にも時間を要し,耐久性も無いため適さないことがわかった。

2. ダイヤフラム式スターリングエンジンの製作

スターリングエンジンは熱源を選ばず,熱源によっては二酸化炭素を排出しないので非常に注目さている。しかし高効率化しようとすると大型化してしまう。そこで小型で,製作に特殊な工具を使用しないダイヤフラム式スターリングエンジンの製作をすることにした。塩ビパイプなど手軽に手に入り,加工のしやすい材料を用いてダイヤフラムをパワーピストンとして代用したエンジンを目指して製作を開始した。試作を繰り返し,パワーピストンの役割を確認できた。だが,クランクシャフトを取り付け,エンジン全体の動作を確認することはできなかった。

3. 声と表情の関係性について

人とコミュニケーションをとることが苦手という人も多いのではないだろうか。なぜ苦手なのかは人それぞれ理由があると思うがいい印象を与えることができる声の出し方がわからない人もいるのではないだろうか。私は経験上笑顔のときの方が声が明るくなったと考える。
 表情が変わると出る声のトーンや明るさが変わってくる。それがなぜなのかを調べた。

4. ギョウジャニンニクの発芽と成長

ギョウジャニンニクは,北海道や寒冷な地域で人気の山菜で,一般には疲労回復などの滋養強壮を持つ食材として好まれている。しかし,スーパーで販売されないのは栽培が困難だからである。植物の発芽には温度・水・酸素の3条件と光が深くかかわっている。そこで簡単に変化を起こせる温度・水・光の条件を変えることで発芽までの日数に変化を与えて,どのパターンがもっとも高い発芽率を出せるのかを調べた。

5. 垂直軸風車の効率化

福島第一原子力発電所の事故や,地球規模の二酸化炭素濃度の上昇の影響を受け,二酸化炭素を排出しない自然エネルギーを利用した発電方法が必要となっている。その一つに風力発電がある。風力発電の風車には水平軸風車と垂直軸風車がある。現在,垂直軸風車は発電効率があまりよくないことからあまり普及されていない。今回は水平軸風車ほど普及していないが,風きり音の騒音被害がなく,水平軸風車ほど土地の面積を必要としないメリットがあるとされる。本研究では,垂直軸風車の効率アップを目指した。
 垂直軸風車を作るにあたって,ブレードに窓を取り付けることで抗力の差を大きくするようにし,磁石の反発力を垂直軸風車に利用して摩擦係数を減らし,回転効率がよくなるようにした。

6. 車の渋滞のシミュレーション

車が渋滞をよく見かける。最初から渋滞が生じているのではない。形成されていく。その形成過程を一箇所に留まり様子を観察したいところだ。しかし,それでは時間もかかりデータをまとめるにも非常に大変だ。渋滞現象をプログラミングで再現することで,発生のメカニズムや要因を分析する。

7. 酸性雨が環境条件変化に与える影響

地球環境問題のひとつとして,酸性雨が挙げられている。本研究では,酸性雨における立地条件と気象条件の関連性を探ることを目的として,学校及び自宅付近に降る雨の酸性度を調査した。pHを測定したところ,立地条件によってpHが違うことがわかった。気象条件との関連性を調査したところ,風を遮る山岳や建物がない方角から風が吹いている日のpHが低いことがわかった。また,酸性水溶液により,物質の表面変化がどのように起こるのか観察した。これらの結果により,酸性雨による建造物の影響について考察した。

8. 電池の工夫

最近の私たちの日常生活で電池は必要不可欠なものである。身近な電池にはアルカリ電池やマンガン電池,ニッケル水素電池などがある。今回は,それぞれ三種類の電池にそれぞれ一番適した使い方を調べる実験と,充電池の寿命や使用できる時間を延ばす使い方を調べる実験を行い,電池の使用効率を使用可能時間の面で明らかにした。

9. 昼夜逆転の生活習慣が及ぼす活動量への影響

ネットの普及や夜勤などにより,夜型の生活をする人が増加している。そこで私たちは,ハムスターを用いて食事時間・光の照射時間を昼夜逆転させる実験を行い,日々の活動との関係性を検証した。結果として,昼夜逆転の生活は日々の活動効率に影響を及ぼすことがわかった。

10. パン酵母菌 ~北海道産の食材の地産池消を目指して~

酵母はアルコール発酵を行う生物で,酒類の製造ややパン製造に用いられている。ワイン製造にはワイン酵母,パン製造にはパン酵母(生イースト,ドライイースト)といったように,一般的には食品ごとに適した酵母が育種されて利用されている。パンの製造については,特徴のある自家製酵母を使用する例も増えている)。本研究では,北海道産の食材の積極的な活用によって地産池消をすすめ,北海道の農業生産をさらに拡大させることを研究課題とし,さまざまな北海道産の食材を使い,各種の含酵母培養液を使用したパンの製造を行った。

11. 運動時の血中乳酸濃度

運動時にたまる乳酸は疲労物質といわれていたが,最近の研究では乳酸自体は疲労物質ではなく体内のエネルギー源であると明らかになっている。短距離走や中距離走だけの血中乳酸濃度を見るのではなく,短距離走と中距離走の血中乳酸濃度の関係について検討することで,どのように乳酸値が変化するのかを調べた。その結果,あまり大きな差は見られなかったが,短距離走の場合はランニング直後の乳酸値が高い人ほど回復が早いという結果が得られた。血中乳酸濃度の測定をし,競技成績の推定や運動強度の設定をすることが,今後のスポーツ選手の競技力向上に役に立つと考えられる。