スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

2016年度 SS課題研究論文要旨集(立命館慶祥高等学校3年)

1. 低温度作動型スターリングエンジンにおける効率の測定

本研究では低温度作動型スターリングエンジンにおける、高出力化を模索する。そこで、簡易に作成できる高温(200℃)に対応したエンジンの制作、作動流体の変更における効率の変化について研究を行った。高温で作動するスターリングエンジンは安定して稼働する状態ではないが作動させることができた。作動流体の変更による効率は大気に比べて比熱の高い気体を使用することで大幅に上昇した。今度はよりエンジンの効率を向上する方法を探していく。

2. 身の回りの大気汚染

本研究では身の回りの地域のエアロゾル粒子について実態を調べるため、金属顕微鏡を使いエアロゾル粒子の良について調べた。電子顕微鏡と光学電子顕微鏡を使い、金属顕微鏡の倍率では観察できなかった形や大きさ、種類について調べた。今後は、なぜその場所でそのようなエアロゾル粒子が見つかったのかについて、調べていきたい。

3. 水面波の研究

私たちは、CMなどでよくみるミルククラウンに魅力を感じ水面波の研究をしょうと思った。
 弱い振動では円形波が東海林、強い振動では花びら状の波が発生し、また、界面活性剤を加えた溶液では水玉が発生した。振動の周波数を変えることにより花びらの枚数を数える実験をすると、周波数と花びらの枚数は比例関係にある事が分かった。また、球体の大きさを変えて実験した実験結果から二次震源の位置が分かった。

4. 混合粉体の斜面の安定性

本研究では、粉体が形成する斜面の安定性を斜面の形状と含水率それぞれの観点から調べた。地震や大雨の二次被害として知られる土砂崩れのメカニズムと状況ごとにわかる危険性を解明することを目的とした研究である。角度を自在に調節できる実験装置を用い、含水率や粉体を構成する形状などを変えて実験を行った。結果としては乾燥状態と保水状態では粉体の安定する条件が異なることがわかった。これらより地震災害時と大雨災害時では危険性が高い地盤が異なると考えられる。

5. 垂直軸型風力発電のエネルギー変換効率の向上

垂直軸型風力発電のエネルギー変換効率の上昇を行うために、風車の回転効率について焦点を当て検証した。この研究では過去の研究を基に羽の形状を変化させることによる回転効率の向上を試みた。前年度まで使用されていた風車との比較によりこの実験は行われる。結果は風車の回転効率の向上は確認することができた。今後、研究に使用した風車に生じる風圧差を算出できる理論式について考えていきたい。また、様々な風速で回転数について計測したい。

6. 電波の受信の研究

電波の受信の基礎研究のために、420MHzの電波を受信したときのアンテナにおける表面波の伝播速度の変化を調べた。実験結果は、ある発信源では伝播速度は「アンテナの太さ・アンテナの材質・電波を受信する状況」によって変わることによって変化することがわかった。また伝播速度は「電気抵抗率・誘導率・アンテナの太さ」と関係があることがわかった。しかしグラフから求めた波の形に統一性がなく、また、2.4GHzのデータは精度低く420MHzと結果と比較できなかった。

7..竜巻に下降流は存在するのか

竜巻の構造を解明することで、竜巻被害の防止に役立てたい。ペットボトルでの竜巻の可視化映像から、竜巻には下降する回転気流があると仮説をたてた。竜巻を発生させ、竜巻の地点ごとの風速と風向きを測定した。しかし、左右対称の結果になるはずか左右非対称の結果となった。原因は測定で用いた市販の風速計であると考えた。そこで、新たに豆電球抵抗温度計を利用した風速計を作成し、これを用いて実験した。その結果、以前の結果と比べて、正確な風速の値を出すことができたが、まだ左右対称の結果にはならなかった。

8.自動車走行の効率化

効率よく自動車が走行できないか考え、自動車の走行を制御する観点から解決する。メタ安定の原因、またカーブがある高速道路で渋滞を起こさないようにするにはどうすればよいか。そこで、効率よく走行できるような走行パターンとサグ部とカーブでは渋滞の発生の仕方や時間が変わるのかを研究する。メタ安定を長時間保つには、車間距離をある感覚や走行速度をある程度一定にすれば良い。また、渋滞を起こさないようにするためには車の数を一定以下にすれば渋滞は起きないと考え、パソコンでシミュレーションを行った。

9. 混合粉体と液状化現象の関係

液状化現象による被害が大きいという課題を解決するために、「液状化現象が発生しない、あるいは予防する条件を明らかにする」というリサーチクエスチョンのもと実験を進めた。大きさから砂に分類される二種類の粉体を用い、二種類の砂を混ぜ合わせて、そこに振動を加えて体積を調べる。結果は「大:小=250mL:150mL」のときに371.33mLとなり、これが最小値となった。この最小値が地中で最も安定しており液状化現象が起こりづらい状態であると考えられる。

10. 葡萄による繊維の染色

北海道の地域の地場産業に葡萄による繊維の染色で貢献したいと考え、本研究で行った。先行研究より、動物繊維は葡萄の色素に染まりやすいが、植物繊維・半合成繊維・合成繊維は染まりづらいことがわかっている。そこで、動物繊維以外の繊維を前処理・先媒染・後媒染をすることで良く染まるのではないかと考えた。前処理として投入または牛乳に浸すことで繊維がより染まり、赤みが増した。先媒染では効果が見られなかった。後媒染では、CuSO4水溶液に浸すことで葡萄特有の紫色が灰色に変色した。

11. 藍染めの染色方法と色落ちについて

現在の染色技術では、藍染めの布は色落ちしてしまう。そこで、藍染めの布の色落ちを防ぐ染色方法を考えたい。天然藍で染色した布よりも、化学藍で染色した布の方が色落ちしやすい理由は化学藍の粒子が小さく、繊維に安定しにくいためであると先行研究により明らかにされている。では、どのような方法で染色を行うと色落ちしにくいのだろうか。本研究では染色回数が多いほど、繊維の隙間が狭くなり、色落ちしにくいのではないかという仮説を立てた。一般的に行われている方法で染色した布を水洗いし、色落ちの度合いを、分光測色計を用いて測定したところ、染色回数が多い方が、色が薄くなりにくいという結果を得ることができた。しかし、分光測色計では数値化できない色の変化もあったため、測定方法を変え、精度を向上させたい。

12.クマムシ類の個体数の変化と生息環境

クマムシには、低温、放射線、水深、水圧の100倍の高圧、宇宙空間など、これらの厳しい自然環境に耐えて生存できることが知られていることからクマムシにはDNAやタンパク質を守る機能があると考えられる。DNAやタンパク質の損傷は、老化や疾病の原因と考えられているため、この機能が何か分かれば、人の若返りや自己治癒ができるようになると言われている。クマムシの実験生物としての重要性は高く、本研究ではクマムシの生息環境を特定し、人工下での飼育繁殖および安定供給のための基礎研究をする。安定した実験材料としてクマムシを得るために、温度や気温、生息している植物などの、生育環境を解明することを目的としてクマムシの生息環境を調査した。

13. 北海道沿岸域におけるウミホタル類の分布、採集、飼育、及び形態観察について

ウミホタル(Vargula hilgencorifii)は本州青森湾までの分布が知られており、北海道沿岸域では若山典央による調査(2010)により数種のウミホタル類の分布が確認されている。その種類や生態、分布などについては未知の点が多い。本研究ではウミホタル類の分布、生態および形態研究の基礎資料とすることを目的とし、北海道日本海沿岸および北海道胆振日高地方沿岸域10地点においてウミホタル類の採集調査を行った。採集調査の結果、北海道日高地方の1地点(様似町)においてウミホタルモドキ科(Philomedidae)のEuphilomedes pseudosordidus を2個体採集した。本論文では、ウミホタル類の分布、採集、調査、飼育、形態観察についてまとめる。

14. 磁気とワラジムシの交替性転向反応

交替性転向反応と呼ばれる修正と磁石などから発せられる磁気に何か相関関係があるのかどうか実験・調査を行った。
 地球業の生物の行動は無意識に地磁気の影響を受けており、反射的な修正である交替性転向反応に何らかの影響を及ぼすのではないかと仮定した。交替性転向反応は幅広い動物群において観察されているが、比較的明瞭に修正を示すワラジウシを使用した。ワラジムシを歩かせる迷路を作成し、迷路に何も処置しない場合と、磁石を設置した場合の条件別に分けながら交替性転向反応の発生率や迷路を脱出する時間を比較した。結果、交替性転向反応と磁気には相関性があると考えられる。

15.川の決壊~浸透破壊現象~

本研究では浸透破壊現象と呼ばれる現象にスポットを当て実験を行った。実験結果として堤防の崩れる要因に、堤防と川の水の流れのぶつかる角度が関係しているのではないかと考えた。本研究ではデータより対策を考えることを目的として実験を行った。