スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

生徒の研究成果

脳内実験室から生みだされる数学の世界
頭のなかに存在する数学実験室

常に笑顔で、アロハシャツがトレードマークの石川剛郎先生が、「なめらかな図形・とがった図形の現代科学」と題して講義をしてくださいました。

理系の教授といえば、最近のドラマの影響もあり、まず私達が思い浮かべるのは白衣を着て、実験をする姿です。しかし、研究室のドアを開けるとそこにはアロハシャツを着た先生と、数式で埋めつくされたホワイトボードが目に飛び込んできました。

石川 剛郎先生

「これは何年か前のもので、大学生が訪問した時に、皆でディスカッションしながら講義をしたなごりです。」

数学とは、現実的なものや物理的なものを考える学問です。おおまかに分類すると代数学・幾何学・解析学・数理系の4つに分けることができます。その中でも先生は幾何学を專門としています。幾何学とは、数学のなかでも図形を專門とする分野で、物理的に存在するものではなく、抽象的に置き換えたものの研究です。さらに詳しく言うと、トポロジーというユークリットの時代からある幾何学の中では比較的新しいものを研究されています。

先生には高校生である私達にも理解できるように、トポロジーについてお話をしていただきました・・・

石川 剛郎先生

図形には様々なものがあります。
例えば、局面なのに裏表がないもの、クラインの坪などですね。
今研究しているのは「特異点のあるトポロジー」です。特異点というのは、物体のとがったところを言います。三次元の空間と時間を含めた四次元の空間のなかで、ながさをはかる計量のようなものとも言えます。

事前に先生の研究をわかりやすくまとめたものを配られた私たちは、事前に疑問に思ったことを直接先生に伺いました。

インタビュアー:ブラックホールに特異点は存在するのですか?

石川:ブラックホールは物理の分野にも入ってしまうのですが・・・これはどのような仮定で考えるかによって答えが変わってきます。ホーキングという物理学者は、ある仮定をもとに考えると特異点がある、と証明をしました。しかし、その後、数学的に違った仮説や物理的要素に基づいて計算していくと、特異点が無い、という結果がでたのです。
実際のところ、どちらが正しいのかは分かっていません。
ブラックホールをいうものは特殊なので、手探りで研究がすすめられています。

私たちの突飛な質問にもすらすらと答えてくれる先生。そんな先生の研究スタイルはコンピューターでのシミュレーションも増えてきている中で、紙とペン。まさに紙の上で実験をしている、といっても過言ではありません。
研究テーマは閃いた時にネタ帳にメモします。
「研究をしていることが世の中に役に立つかどうかは気にしていません。それは後から考える・・・というより、人に考えてもらっています(笑)」

石川 剛郎先生

実際に講演でも使われている、トポロジーの球面くみひもと呼ばれる手づくりの装置も見せていただきました。
知恵の輪のようです。

そんな先生にもスランプに陥ることがあります。対処法を伺うと・・・
「一時期、と言っても半年くらいですが、数学から離れてすごします。妻と買い物にいったりするくらいですね。」
旅行も趣味だという先生はハワイ好き。トレードマークが生まれた原点は気分転換でした。

小さい頃から本が大好きで、小説家にもなりたかったという先生。研究室にも英語で書かれた本がずらりと並べてあります。自分で論文を書くときの参考にしたり、講演でわかりやすく伝えるために参考にしているそうです。

石川 剛郎先生

最後に、数学科の図書室に案内して頂きました。中には和書・洋書・数学の雑誌などが多数置かれていて、学生も利用することができます。その莫大な量の本に私達は圧倒されてしまいました。

石川 剛郎先生

緊張気味の私達に常に笑顔で、時には冗談を交えて私達にも笑顔を与えてくださりつつ、わかりやすく取材に応じてくださった先生。本当にありがとうございました。

高校2年
髙岡 沙耶,藤田 沙織,吉田 叶倫,長田 晋一